(2004年9月3日)


 2001年に上井喜彦/野村正實編『日本企業 理論と現実』ミネルヴァ書房を刊行した。今回、その英語版が出版された。Masami
Nomura and Yoshihiko Kamii (eds.), Japanese Companies: Theories and Realities,Trans Pacific Press である。注文は同社のホームぺじからできる。
http://www.transpacificpress.com/public/home.ehtml
 英語版の話は、Trans Pacific Pressの杉本良夫さんから持ち込まれた。日本国内の論争が外国でよく知られていないということを気にかけていた杉本さんが、出版しないか、と私に話を持ってきてくれたのである。もともと『日本企業 理論と現実』をまとめる時に、できれば英語版も出したい、と思っていたので、すぐに話を具体化しようと思った。しかしこの種の本は商業ベースに乗ることがきわめて困難である。ということで、日本学術振興会の研究成果公開促進費を申請することになった。もし採択されなかった場合には執筆者がある程度の自己負担を覚悟してでも出版したほうがいいのではないかと思っていたが、幸いにも科学研究費補助金が交付されることになった。2003年度に翻訳、そして2004度に刊行、というスケジュールであった。
 翻訳が出はじめてからは、相当な時間をこの英語版にとられることになった。共同編集者の上井氏が埼玉大学経済学部長として学内行政に追い回されているため、英語版にかんしては、私が編集に当たることになった。学内行政とは縁遠い私の当然の責務だろう。しかし、私自身の研究プランは、この英語版の編集のために大幅に遅れることになった。
 この本は『日本企業 理論と現実』の英訳なので、執筆者はもちろん『日本企業 理論と現実』と同じで、私と上井氏のほかに、浅生卯一、遠藤公嗣、植田浩史、大沢真理、金子勝、竹田茂夫の各氏である。非常に、というよりも、無茶苦茶に忙しい人も含んでいたので、出版社の要求するスケジュールと執筆者の事情との間で苦しい場面もあったが、ともかく市場に登場したことに満足している。そして、杉本氏および執筆者に感謝している。

『日本企業 理論と現実』の目次は以下のとおりである。


はしがき        上井喜彦・野村正實

T 実態編

第1章 人事査定は公平か 遠藤公嗣    
  1 問題の設定
  2 小池和男「公正な査定」論の批判
  3 羅列的「公正な査定」論の批判
  4 査定結果を知る権利の欠如
  5 長期勤続従業員の査定差別

第2章 職場の情報は共有されているか  浅生卯一
  1 「水平的情報機構論」
  2 作業活動の調整の仕方
  3 「株式化された事実」
  4 「水平的情報機構論」に欠落していること

第3章 非正規は差別されていないか  大沢真理   
  1 「フルタイム・パート」を含めて
  2 1990年代の「パートタイム」労働者の処遇実態
  3 「パートタイム」労働者の処遇にかんする政策と学説
  4 均等待遇は正社員のためにも

第4章 下請はリスクシェアリングか  植田浩史
  1 下請評価の変化と新しい議論の登場
  2 下請 −「問題」から成功の「鍵」への転換
  3 浅沼萬里の下請(サプライヤ)論
  4 青木昌彦の下請への評価
  5 下請のこれまでとこれから

第5章 日本の労働組合は交渉しているか  上井喜彦
  1 1980年代の交渉論
  2 青木昌彦の「交渉ゲーム」論
  3 小池和男の交渉機能論
  4 「分配」をめぐる労働組合の交渉力
  5 「努力」をめぐる労働組合の交渉
  6 「経営戦略」に対する労働組合の交渉力
  7 企業別労働組合の難点

 U 理論編

第6章 知的熟練論の問題点  野村正實
  1 知的熟練論
  2 専門工と生産性
  3 内部労働市場
  4 実証なき理論

第7章 青木理論と日本企業の現実  金子 勝
  1 今なぜ青木理論を問題にするのか
  2 双対性原理 −青木理論の骨格
  3 青木の理論と現実
  4 企業合理性はマクロ経済の合理性か
  5 本当の課題は何か

第8章 企業論の失敗  竹田茂夫
  1 「比較制度分析」の日本企業論
  2 日本企業の「合理的」説明
  3 合理性と効率性
  4 情報とインセンティヴ
  5 交渉ゲーム
  6 制度的補完性
  7 理論のための理論?
  付論 非協力交渉ゲーム